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カムフラージュハウスⅠ

 

カムフラージュハウスⅠの敷地は、起伏の多い山際の谷部分に位置し、すぐ脇を小川が流れる。カムフラージュハウスⅠの最大の特徴は、周辺環境を建築形態のモチーフとして引用したつくり方をしていることです。外壁に使用したこげ茶色の杉板押縁下見板張りは、周辺の伝統的建築に多く見られるものです。これと、敷地に沿って湾曲した平面形により外観を構成しています。

また、内部はスキップフロアとなっていて、ひとつの大きな登り窯のような空間でありながら、4つの場を形成しています。1階のリビングからダイニング、キッチン、寝室・屋上デッキテラスへと連なっています。建主の要望は、敷地内にある既存の母屋(元工場)屋上に眺めのよいデッキを設け、全体としては、斬新なデザインの建築とすることでした。内部のスキップフロアのあり方は、周辺の起伏のある段状のぶどう棚などをモチーフに考え出したものです。登り窯のようになっているため、1階リビングの薪ストーブで、ほぼ全室を暖房することを可能にしました。また、ぶどう棚の特徴的なワイヤーのテンション構造と同じ考え方のバットレスが外部に露出しています。私は、このような敷地周辺に見られる形態をモチーフとして用いる方法を、周辺の景観との調和をつくり出すときの有効なひとつの方法であると考えています。この方法で建築のかたちを考えるときに、「擬態」という生物学上の形のとらえ方に思いをはせます。「擬態」にはさまざまな例がありますが、よく知られた例としては、昆虫などで、木の葉とそっくりな色・形をしたコノハムシや木の枝そっくりなナナフシ、枯れ葉のようなキリギリスなどはよく知られています。これらは「擬態」の中のカムフラージュという分類に入るもので、周辺のものと見かけ上同化することで、主に身を守るためのものであります。こうした自然界の精巧な形態や色彩のあり方に驚嘆する一方で、ふと形態や色を扱うという点では建築デザインでも学ぶべきことが多くあるように思うのです。特にこれからは、建築も自然界の中のひとつの存在としてとらえる視点が重要と考えます。なぜならば、山並みや大地と調和するようなデザイン、森に溶け込むようなデザインなどの手法は、いい替えれば「カムフラージュ型建築」とでも呼べるかもしれないからです。

■建物名称:カムフラージュハウスⅠ
CAMOUFLAGED HOUSE Ⅰ

■所在地:山梨県東山梨郡
Higashiyamanashi-gun, Yamanashi

■用途:専用住宅

■設計:㈱井口浩フィフィス・ワールド・アーキテクツ
HIROSHI IGUCHI + FIFTH WORLD ARCHITECTS

■施工:㈱武田工務店

■敷地面積:1,138.92㎡

■建築面積:69.47㎡(21.01坪)

■延床面積:97.32㎡(29.44坪)

■写真:北嶋俊治氏